からだ図鑑 01 / 消化管の入り口
口くち(口腔:こうくう)
食べ物の旅のスタート地点。歯でかみくだき、舌でまとめ、だ液でとかしはじめます。消化は、飲みこむ前からもう始まっています。
- 大人の歯
- 32本
- 1日に出るだ液
- 約1〜1.5L
- 舌の上の味蕾
- 数千個
消化は、口から始まっている
食べ物を体に取りこめる大きさまで分解することを消化といいます。消化には2つのやり方があります。ひとつは、かむ・つぶす・まぜるといった、力で細かくする消化。もうひとつは、消化液にふくまれる酵素(こうそ)が、食べ物の成分を化学的に切り分ける消化です。
口では、この2つが同時に始まります。歯が食べ物を小さくすると、だ液とふれる面積が増えて、酵素がはたらきやすくなります。人体ダイブの旅は、ラーメンをひと口食べたところからスタートしますが、麺はこの時点でもう、少しずつ分解され始めているのです。
歯:切る、さく、すりつぶす
大人の歯は、親知らずを入れて32本。子どもの歯(乳歯)は20本で、6歳ごろから12歳ごろにかけて、大人の歯に生えかわります。親知らずは、生えてこない人や、4本そろわない人もいます。
歯は場所によって形と役わりがちがいます。前歯(切歯)は食べ物をかみ切り、とがった犬歯は引きさき、奥歯(小臼歯と大臼歯)は平らな面ですりつぶします。肉も野菜も食べる人間は、いろいろな形の歯をもっているのです。
歯の表面をおおうエナメル質は、からだの中でいちばん硬い組織です。その内側に象牙質(ぞうげしつ)があり、まん中の歯髄(しずい)には神経と血管が通っています。冷たいものがしみたり、虫歯が痛んだりするのは、この神経が刺激を感じるからです。
舌:筋肉のかたまり
舌は、向きのちがう何種類もの筋肉が重なってできた、筋肉のかたまりです。前後・左右・上下に自由に形を変えられるので、食べ物を歯の上に運んだり、だ液とまぜたりできます。かみ終わった食べ物を、飲みこみやすいひとかたまり(食塊:しょっかい)にまとめるのも舌の仕事です。
舌の表面をよく見ると、小さなツブツブがびっしり並んでいます。これは乳頭(にゅうとう)とよばれる突起です。いちばん数が多い糸状乳頭は、舌の表面をザラザラにして食べ物をとらえやすくします。舌の奥にV字に並ぶ大きな粒は有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう)で、味を感じるセンサーがとくにたくさん集まっています。
舌は、話すときにも大活躍します。「た」「ら」「さ」などの音は、舌の位置や形を変えることで作り分けています。
味蕾:味を感じるセンサー
味を感じているのは、乳頭のまわりなどにある味蕾(みらい)という小さな器官です。舌全体で数千個あり、上あごの奥やのどにも少しあります。食べ物の成分がだ液にとけて味蕾に届くと、その情報が神経を通って脳に伝わり、「あまい」「しょっぱい」と感じます。
味蕾が感じとる基本の味は、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つです。このうち「うま味」は、1908年に日本の化学者・池田菊苗(いけだきくなえ)が、昆布だしの成分(グルタミン酸)から発見しました。いまでは「UMAMI」として世界中で通じる言葉になっています。
ちなみに、「舌の先は甘味、奥は苦味」のように、場所によって感じる味が決まっているという「舌の地図」は、じつは誤解です。場所によって少し感じやすさのちがいはありますが、舌のどの場所の味蕾も、5つの味をすべて感じとれます。また、辛さは味ではなく、痛みや熱さを感じる神経がとらえている感覚です。
だ液:消化液のトップバッター
だ液は、耳の前にある耳下腺(じかせん)、あごの下の顎下腺(がっかせん)、舌の下の舌下腺(ぜっかせん)という3つの大きなだ液腺と、口の中の小さな腺からつくられます。その量は、1日に約1〜1.5L。大きなペットボトルほどの量です。
だ液には、でんぷんを分解する酵素アミラーゼがふくまれています。ごはんをよくかんでいると、だんだん甘く感じてきますね。これは、でんぷんが分解されて、甘みのある麦芽糖(ばくがとう)に変わったからです。
だ液の仕事は消化だけではありません。
- 食べ物をしめらせて、飲みこみやすくする
- 口の中を洗い流し、細菌がふえるのをおさえる
- 食べたあとに酸っぱくなった口の中を中性にもどし、歯をとけにくくする
- 味の成分をとかして、味蕾に届ける
眠っているあいだはだ液があまり出ないので、細菌がふえやすくなります。朝起きたときに口がネバネバしたり、においが気になったりするのはそのためです。
口のいちばん奥
口を大きく開けると、天井のいちばん奥から、小さな突起がぶら下がっているのが見えます。これが口蓋垂(こうがいすい)、いわゆる「のどちんこ」です。飲みこむ瞬間、口蓋垂と上あごの奥のやわらかい部分(軟口蓋)がいっしょに持ち上がって、食べ物が鼻のほうへ逆流しないように道をふさぎます。
その両わきにあるふくらみは扁桃(へんとう)です。口や鼻から入ってきた細菌やウイルスをいち早く見つける、免疫の見張り番です。かぜをひいたときに、ここが赤くはれることがあります。